ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
そんな恋愛初心者みたいな私が年上の安積さんによくこんな提案を投げかけたものだ。安積さんも言っていたが確かに”ぶっ飛んで”いる。こんな提案をのんでくれたということは安積さんに今恋人はいないのだろう。いたらそもそもそれを一番の理由で断ってくるはずだ。そしてその時にもまたハッとする。

(待ってるヤツ……は、だれ?)

 いつか聞いてしまった。柳瀬部長の揶揄いに照れもせずそう溢した安積さんの言葉を。

 やっぱりまだまだ知らないことが多い。私が知っている安積さんはオフィスの上司の顔しか知らないのだ。プライベートになったら全くなにひとつとわからなくなる。

 本当に知ることが出来るのだろうか、安積さんのことを。

 たった三カ月の限られた時間で知って、知ってもらえることなど本当に……。

「こいびと……」

 鏡に映る自分に問いかける。

 私の知っている恋人のイメージはほぼ当てにならないようなものだ。良い恋愛じゃなかった、忘れたい事もたくさんある。思い出すだけで気持ちが荒むようなそんな思いが積み重なっているから……。

「安積さんは、どんな恋愛をしてきたのかな」
 
 大人の恋愛、期間限定の恋人は――なにをすればいいの?
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