ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「安積さん、顔赤いですよ?」

「赤くなるわ! そんなっ……いきなり俺の話になると思わないっ……」

「……私は基本安積さんを中心にして話をしているのですが」

「もう本当に勘弁して!」

 ますます赤くなるから可愛すぎて。揶揄いたいわけではないがもっと見たくなってしまう。

「そんな……私よりもずっと恋愛慣れしてるでしょう?それこそ安積さんは大人、なんだし」

 こんな告白ひとつで照れるような人には見えなかった。なんならうまくかわせる慣れた人だと思っていたのに。

「どんなイメージしてるのか……大人だからって場数があるわけでもないし。俺だって大した恋愛なんかしてないよ。四宮の勘違い」

「え?」

「……ずっと恋愛からも離れていたのに」

 ぽつりこぼされた言葉ははっきりと聞き取れなかった。

「安積さん?」

「そんな直球……どんな男でも勘違いするし自惚れるよ。本当にやめて」

「自惚れていただいていいのですが……」

「四宮!」

 照れ隠しなのかピシャリと名前を呼ばれて肩をすくめる。

 それでもどうしよう、この時間がどうしようもなくくすぐったくて。

 今まで過ごしてきた上司と部下の関係とは違う空気だ。感じてしまうのだ、いつもと違う、なんだか特別だと。
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