ダーリンと呼ばせて～嘘からはじめる三カ月の恋人～

　デスク上を片付けていたらバタバタと急に音がして何だろう、と意識を向けたら扉が開いてそこに安積さんがいた。

「安積さん！　ど、どうしたんですか？！」
　
　しかもずぶ濡れだ。

「あー濡れたぁ……まだ残ってたのか？」

「もう帰ろうかと……」

「え、今？」

「え？」

「外やばいぞ。雨」

「え！」

　雨に全く気付いていなかった。そういえば今日は夜に雨が降ると予報されていたことをふと思い出すのだが。

「とりあえずタオル！　取ってきますね！」

　濡れた安積さんが風邪を引いてしまうと慌ててオフィスの備品棚からタオルを引っ張り出してきて駆けつけた。

「早く拭かないと……」

　慌ててタオルを頭からかぶせてハッとした。

「……」

　濡れた髪の毛から雫がぽたりと私の頬に落ちてきて、見上げた瞬間吸い込まれる――安積さんの瞳の中に。

「雫が……」