ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 心臓が落ち着かない。

 先ほどの色気全開の安積さんを脳裏に浮かべて熱が引かないままの私は、このままここに残って大丈夫だろうか。せめて戻られる前になんとか頬の火照りを抑えたい。

 気を紛らわせるためにも冷えたであろう安積さんに熱いコーヒーでも淹れようとそそくさとカフェブースに足を運んだ。

 コーヒーがちょうど入ったところで安積さんがオフィスに戻ってきた。

「安積さん、コーヒーどうですか?」

「ありがとう、もらう」

 半渇きの髪がまだかき上げられたままで結局胸はドキドキのまま。着替えたところでワイシャツ姿だけれど、オフ感がすごい。普段の業務中とは違う、なんだかプライベートな安積さんがそこにいる。

「熱いので……気を付けてくださいね」

「ありがと」

 受け取る手に視線をやって泳ぐ目をなんとか伏せる。この高鳴る胸の音がどうか安積さんには聞こえませんように、そんな願いを込めていたら頭の上に降ってきた声。

「あち」

「……」
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