ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 湯上りに安積さんの服を着るってこれ、なんのご褒美だろうか。

(わかりきっていたけど……大きい)

 厚手のスウエットは着せられている感。袖を折ったところでダボっとして、お尻まですっぽり隠れるほど。

 これはきっとハーフパンツだよね?そう思うけれど私には膝下くらいにまで長い。

 服は濡れてまた着られないことはなかったけれど、それで寝るにはさすがに抵抗があった手前服を貸していただけたのはありがたかった。ドラム洗濯機でちゃんと乾かして寝れば明日には着られるよと微笑まれたら素直に安積さんの服をお借りする以外ない。厚かましいかな、そんな気持ちはあったけれど思った。

(私、恋人だもん……)

 言い出した自分が一番それに慣れていないのが滑稽である。

 言い聞かせないと慣れない。言い聞かせたところで手探り感満載なのだ。自分で自覚していくしかない。

「お風呂ありがとうございました……」

 おそるおそるリビングに戻ると目を見開く。

「モ……っ!」

 驚かせたくはないから叫びかけた気持ちを何とか抑え両手で口元を抑えた。

 そんな私に気付いた安積さんがフッと微笑んで手招きしてくれる。
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