ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
「え、ち、近寄っても大丈夫ですか?」

 私が近寄ったらまた逃げてしまうのではないかと思ったが安積さんは変わらずうんうんと頷いてくれるから甘えてそろそろと距離を詰める。近寄るほど腰が低くなり、ラグに乗るころにはもはやハイハイ状態で近寄る。

 それを安積さんは笑いをかみ殺しながらジッと私を見つめていた。モモちゃんは安積さんの膝の上で静かに座って気持ちよさそうに顎を撫でられている。目は合ってはいるが逃げそうな雰囲気はない。

「ええ、可愛いっ……黒白だぁ、可愛い」

 全体的には白寄りだけれどしっかりと黒の模様が入っていてグレーシルバーの瞳はくりくりとしている。しっぽがゆらゆらと揺れて全体的フォルムが可愛すぎる。

 そして安積さんとセット! やはり今日は何のご褒美デイなんだと思わずにはいられない。

「は、はじめまして……四宮こと葉です」
 
 モモちゃんに挨拶をしたら堪えていた笑いを吹き出す安積さん。

「な、なんで笑うんですかぁ!」

「猫にフルネームで挨拶するやつ初めて見た」

 肩を揺らすほど笑うから居た堪れなくなるが今ばかりは構っていられない。モモちゃんはいつ機嫌を損ねて隠れてしまうかわからないのだから。
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