あの日の第二ボタン
次の木曜日。
悠依は昼休みになった途端に体育倉庫を目掛け全力疾走する。
普段走り慣れていない悠依は体育倉庫に着く頃には息があがっていた。
遅れて優人が体育倉庫に到着するがその傍には航希がいた。
二人はどうやら部活の練習メニューを組んでいる様子だった。
悠依は邪魔せまいと気配を消した。
話しかける勇気がなかったので悠依にとってはむしろ好都合だった。
悠依は優人のことをずっと目で追った。悠依は優人の動きを真似てみた。
照れた時に人差し指で耳たぶを掻く仕草。ボールを投げる仕草も真似てみた。
ガシャン
悠依の手が体育倉庫のシャッターにぶつかり大きな音を立てる。
優人と航希は突然の音に驚き悠依の方を見る。
「……大丈夫、ですか?」
優人が声をかける。
悠依は恥ずかしさのあまり赤面して頷くことしかできなかった。
(もう、私の馬鹿っ。)
悠依は隠れるように縮こまった。そ
んな悠依を気にかけることなく優人と航希はまた会話を始めた。
五月に入り、二回目の委員会の集まりが開かれた。
悠依は小学校からの友達である仲野葵衣(あおい)と話していた。
優人は時間ギリギリに体育館に駆け込み床に座った。
体育館の床に直接座るので、急いで移動し熱くなった体がひんやりと冷たくなり気持ちよかった。
息を整えながらふと前をみるとそこには友達と話す悠依がいた。
(あ、この子、当番が同じ子だ……)
優人は悠依が笑う時に手で口を隠す癖、そしてほとんど見えなくなる目に釘付けになった。
悠依は視線を感じ、ふと後ろを振り返ると優人と目が合った。
しかし、お互いにすぐ目を逸らしてしまう。
委員会活動開始のチャイムが鳴り、柴橋が急いでドタドタと走ってきた。
生徒たちは学年クラス順に座り直した。
柴橋は号令をかけて、委員会活動を始め、集まった人数の割には大きすぎる声で言った。
「今月からは昼休みに体育館も開放するとのことです。四月は、とりあえずで、クラス縦割りで月曜から金曜までのボール当番やってもらってるけど、今月からの当番は、これからくじ引きで決めます。三学年五クラスから一人ずつ来てるから、校庭の当番は各曜日二人ずつで、体育館は各曜日一人ずつって感じでいきます。」
柴橋は教科書の箱を使い回しているであろうくじ引きボックスを一年一組から回していく。
四番目に悠依の順番が回ってきた。
悠依は右手で紙を引き、中身を確認する。
読むのがやっとな程に殴り書きされた字で「木 校庭」と書かれている。
悠依は昼休みになった途端に体育倉庫を目掛け全力疾走する。
普段走り慣れていない悠依は体育倉庫に着く頃には息があがっていた。
遅れて優人が体育倉庫に到着するがその傍には航希がいた。
二人はどうやら部活の練習メニューを組んでいる様子だった。
悠依は邪魔せまいと気配を消した。
話しかける勇気がなかったので悠依にとってはむしろ好都合だった。
悠依は優人のことをずっと目で追った。悠依は優人の動きを真似てみた。
照れた時に人差し指で耳たぶを掻く仕草。ボールを投げる仕草も真似てみた。
ガシャン
悠依の手が体育倉庫のシャッターにぶつかり大きな音を立てる。
優人と航希は突然の音に驚き悠依の方を見る。
「……大丈夫、ですか?」
優人が声をかける。
悠依は恥ずかしさのあまり赤面して頷くことしかできなかった。
(もう、私の馬鹿っ。)
悠依は隠れるように縮こまった。そ
んな悠依を気にかけることなく優人と航希はまた会話を始めた。
五月に入り、二回目の委員会の集まりが開かれた。
悠依は小学校からの友達である仲野葵衣(あおい)と話していた。
優人は時間ギリギリに体育館に駆け込み床に座った。
体育館の床に直接座るので、急いで移動し熱くなった体がひんやりと冷たくなり気持ちよかった。
息を整えながらふと前をみるとそこには友達と話す悠依がいた。
(あ、この子、当番が同じ子だ……)
優人は悠依が笑う時に手で口を隠す癖、そしてほとんど見えなくなる目に釘付けになった。
悠依は視線を感じ、ふと後ろを振り返ると優人と目が合った。
しかし、お互いにすぐ目を逸らしてしまう。
委員会活動開始のチャイムが鳴り、柴橋が急いでドタドタと走ってきた。
生徒たちは学年クラス順に座り直した。
柴橋は号令をかけて、委員会活動を始め、集まった人数の割には大きすぎる声で言った。
「今月からは昼休みに体育館も開放するとのことです。四月は、とりあえずで、クラス縦割りで月曜から金曜までのボール当番やってもらってるけど、今月からの当番は、これからくじ引きで決めます。三学年五クラスから一人ずつ来てるから、校庭の当番は各曜日二人ずつで、体育館は各曜日一人ずつって感じでいきます。」
柴橋は教科書の箱を使い回しているであろうくじ引きボックスを一年一組から回していく。
四番目に悠依の順番が回ってきた。
悠依は右手で紙を引き、中身を確認する。
読むのがやっとな程に殴り書きされた字で「木 校庭」と書かれている。