あの日の第二ボタン
悠依は心の中で呟く。
次に引いた葵衣はすぐさま悠依に曜日を聞いてきた。

「ゆい、何曜日だった?」

「私、木曜日。」

「え、うちと一緒じゃん!よかったー。」

悠依は半分喜んだ。
全く知らない人と当番が一緒になると沈黙が気まずくて仕方がなかったからだ。
同じく安心する葵衣が紙を見直す。

「あぁ、なんだ。うち体育館じゃん。ってことはぼっち確定〜?」

渋い顔をする葵衣を横目に悠依は胸を撫で下ろす。
がっかりする葵衣を適当にあしらい、悠依は次々と回されるくじ引きボックスの行方を固唾を飲み込んで見守る。

くじ引きボックスは二年一組から三年一組へと渡されていた。
くじを引いた生徒が次々に「月曜の校庭の人〜?おぉ、よろしくね!」と軽い挨拶を交わしていた。

そして箱はついに優人の元へ回ってきた。
残された紙は二枚。
優人は敢えて下側の紙を引いた。
優人は紙に書かれた曜日と場所を確認するが字が汚すぎて読めず、柴橋に確認する。

「んん〜?これ何曜日だ?字が汚すぎて読めねぇな。多分、水曜か木曜のどっちかなんだけどなぁ……」

柴橋は自分の字の汚さを客観的に見せられ苦笑しながら全体に尋ねた。

「木曜の校庭の人いるか〜?」

「あっ、はい!」

悠依は控えめに手をあげた。

(お願い、他に誰もいないで)

悠依は心の中で願う。

「……」

体育館に沈黙が広がる。
各生徒が自分の紙を改めて確認するも、悠依以外に手をあげる生徒はいなかった。

(やった。ってことは……)

「ってことは、宮田は木曜日の校庭だな。今までと同じじゃないか!」

柴橋はやけに上機嫌に優人に言った。
優人は、そうっすねと返事する。柴橋は右腕につけた腕時計で時間を確認し、頭を掻きながら言った。

「困ったな。委員会の時間、あと十分もあるけどまぁ、ここで終わるか。じゃあ、来週からその曜日と場所での当番になるんで、間違えないようにな!よしっ教室に戻っていいぞ!」

生徒がゾロゾロと出口の方に歩き出す。
優人は手の中の「木 校庭」の字を見て笑みがこぼれた。
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