罪深く、私を奪って。
どのくらい、そうしていたんだろう。
恐怖と緊張で時間の感覚が麻痺した頃、乱暴にドアを叩く音が聞こえた。
突然響いた大きな音に、びくんと体が大きく震えた。
「おい! 大丈夫か!?」
ドアの向こうから聞こえてきた取り乱したその声に、思わずホッと力が抜けた。
震える体を引きずり、玄関のドアのカギを開けると、大きく扉が開いて外の冷たい空気が一気に流れ込んできた。
いつも余裕の表情で感情を外に出さないその人が、息を切らし取り乱した様子に、どれだけ急いでここへ来てくれたのかが伝わった。
「い、石井さん……」
「大丈夫か?」
石井さんは涙でぐちゃぐちゃの私の顔を覗き込むと、手を伸ばしそっと頬に触れた。
その指先が冷たくて、こんな時間なのに駆けつけてくれた事実に、ひどく胸が締め付けられた。
「す、すいません。こんな時間に……」
「いいから、黙れ」
途切れ途切れの私の言葉を遮る、石井さんの大きな手のひら。
私の口を塞いで、苛立ったように舌打ちした。
「誰かがドアの前にいたのか?」
タオルケットにくるまり、しゃがみ込んだままの私を見下ろしてそう言う石井さんに、震えながら頷いた。
「郵便受けに、写真を……」
私の言葉に、廊下の床に放り出されたままの写真に目を向けた。
足元に散らばった写真。
その中に写る私と石井さんの姿に、彼は怒りを押し殺すようにゆっくりと息を吐き出した。
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