罪深く、私を奪って。
その震えが寒さのせいなのか、それとも恐怖のせいなのかはわからないけれど、心地よい温かさに包まれて震えが治まって来たのは事実。
エアコンのリモコンを持って室内の設定温度を調節する、口の悪いその人の背中に向かって、
「ありがとうございます……」
と、小さくお礼を言った。
ローテーブル、テレビ、オーディオ、マガジンラック。
深いブラウンのカーテン。同系色のラグ。
いかにも料理をしていなさそうな、ガランとした生活感のないキッチン。
ソファーに座ったままリビングを見渡して、視界に入ったのはそれくらい。
本当に物のない殺風景な部屋。
亜紀さん、あまり石井さんの部屋に遊びに来たりしないのかな。
女の人の存在をまったく感じさせない石井さんの部屋に、なぜか少しだけホッとした。
コツン、と小さく固いもの同士がぶつかる音に顔を上げると、ソファーの前のローテーブルにシンプルな白いコーヒーカップがひとつ、暖かい湯気をたてていた。
「コーヒーでいいか?」
いかにも石井さんが選びそうな、シンプルで実用的なカップに、砂糖もミルクも添えられず出されたブラックコーヒー。
「ありがとうございます」
本当はコーヒーは少し苦手なんだけど、そのブラックコーヒーになぜかほっとした。
もしも、女の子らしい柄のマグに甘党の亜紀さんの大好物のココアなんて出されてしまったら、私は泣いてしまっていたかもしれない。
エアコンのリモコンを持って室内の設定温度を調節する、口の悪いその人の背中に向かって、
「ありがとうございます……」
と、小さくお礼を言った。
ローテーブル、テレビ、オーディオ、マガジンラック。
深いブラウンのカーテン。同系色のラグ。
いかにも料理をしていなさそうな、ガランとした生活感のないキッチン。
ソファーに座ったままリビングを見渡して、視界に入ったのはそれくらい。
本当に物のない殺風景な部屋。
亜紀さん、あまり石井さんの部屋に遊びに来たりしないのかな。
女の人の存在をまったく感じさせない石井さんの部屋に、なぜか少しだけホッとした。
コツン、と小さく固いもの同士がぶつかる音に顔を上げると、ソファーの前のローテーブルにシンプルな白いコーヒーカップがひとつ、暖かい湯気をたてていた。
「コーヒーでいいか?」
いかにも石井さんが選びそうな、シンプルで実用的なカップに、砂糖もミルクも添えられず出されたブラックコーヒー。
「ありがとうございます」
本当はコーヒーは少し苦手なんだけど、そのブラックコーヒーになぜかほっとした。
もしも、女の子らしい柄のマグに甘党の亜紀さんの大好物のココアなんて出されてしまったら、私は泣いてしまっていたかもしれない。