罪深く、私を奪って。
私の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らすシロを見下ろして、石井さんは小さく微笑む。
そんな顔を見せられたら、その笑顔が自分の為に向けられてるんじゃないかなんて勘違いしてしまいそうで。
私は膝の上にいる白い猫に視線を移しながら口を開いた。
「小さい頃から動物が好きで、ずっと飼いたかったんですけど一度も飼ったことないんです。私小児喘息だったから、両親が絶対ダメだって許してくれなくて」
「ふーん」
「小学校の時、そんな親に反抗して家を飛び出した事あったなぁ。あっという間に見つかって、すごく叱られたけど……」
膝の上の心地好い温かさに、そんな昔の事を思い出した。
でも、そんなつまらない話、石井さんは興味ないだろうな。
そう思って口を閉じると、
「それで?」
いつもは冷たい彼が、優しい口調で先を促した。
「別に、面白くもない話ですよ」
小学校の時。
確か寒い、雪の降る季節だった。
学校から帰る途中で見つけたダンボール箱。
その中に小さく震えながら、今にも消えてしまいそうなくらい細い声で鳴く灰色の子猫。
その子をどうしても助けてあげたくて、手を伸ばして恐る恐る抱き上げたけど、震える小さな体を胸に抱いた途端、急に呼吸が苦しくなった。
ゼーゼーと呼吸をするたびに変な音をたてる肺。
止まらなくなった咳。勝手に溢れる涙。
ああ、喘息の発作だ。
そう思ったけれど、そのまま猫を手放すなんてできなくて。
そんな顔を見せられたら、その笑顔が自分の為に向けられてるんじゃないかなんて勘違いしてしまいそうで。
私は膝の上にいる白い猫に視線を移しながら口を開いた。
「小さい頃から動物が好きで、ずっと飼いたかったんですけど一度も飼ったことないんです。私小児喘息だったから、両親が絶対ダメだって許してくれなくて」
「ふーん」
「小学校の時、そんな親に反抗して家を飛び出した事あったなぁ。あっという間に見つかって、すごく叱られたけど……」
膝の上の心地好い温かさに、そんな昔の事を思い出した。
でも、そんなつまらない話、石井さんは興味ないだろうな。
そう思って口を閉じると、
「それで?」
いつもは冷たい彼が、優しい口調で先を促した。
「別に、面白くもない話ですよ」
小学校の時。
確か寒い、雪の降る季節だった。
学校から帰る途中で見つけたダンボール箱。
その中に小さく震えながら、今にも消えてしまいそうなくらい細い声で鳴く灰色の子猫。
その子をどうしても助けてあげたくて、手を伸ばして恐る恐る抱き上げたけど、震える小さな体を胸に抱いた途端、急に呼吸が苦しくなった。
ゼーゼーと呼吸をするたびに変な音をたてる肺。
止まらなくなった咳。勝手に溢れる涙。
ああ、喘息の発作だ。
そう思ったけれど、そのまま猫を手放すなんてできなくて。