罪深く、私を奪って。
「私の事なんでどうでもいいの! それより詩織の事の方が気になるんだけど」
「気になるって、なんですか?」
近くを通った店員さんにビールのおかわりを頼みながら、亜紀さんは私に向かって身を乗り出した。
「詩織ってあんなにモテるのに、ぜんぜん男の気配ないよね。男嫌いなの?」
ストレートにそう聞かれ、思わず言葉につまって目を反らした。
「何言ってるんですか亜紀さん。私モテないですよ、ぜんぜん……」
「嘘つけ。今日だって広報部のメガネくんに言い寄られてたじゃん。あの人もけっこうしつこいよね」
「メガネくんって、沼田さんの事ですか? 入社試験で一緒になってからよく声かけてくれるんですけど、言い寄られてなんてないですよ。ただ食事に誘ってくれてるだけです」
「またそうやってとぼけちゃって。あっちは本気で詩織に惚れてるの、分かっててはぐらかしてんでしょ? 悪い女ー」
冗談半分の口調でそう言われ、思わず視線が下を向く。
『分かっててはぐらかしてる』
確かに、そうなのかもしれない……。
自然と大きなため息が出た。
「あ、ごめん! 詩織落ち込んだ? 私アルコール入ると言い方がキツクなるんだよね」
俯いた私を見て、亜紀さんが慌てた声を出す。
「ううん、違うんです。本当に私、イヤなやつだなぁと思って。ダメなんですよねそういうの」
テーブルの上のグラスを両手でつかみながら、そう言って笑顔を作った。
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