罪深く、私を奪って。
ぽつりぽつりと話す沼田さんの言葉に、おぼろげだった2年前の記憶が少しずつ鮮明になる。
「僕、緊張と暑さで具合悪くなったんですよね。でも、もうすぐ面接の順番が回って来るかと思うと席を立つこともできなくて。もう少し我慢しようって思ってるうちにどんどん冷や汗が出てきて」
覚えてる。
その時も沼田さんはきつく手を握りしめてた。
小刻みに震える手を、自分の膝の上でぎゅっと握りしめて必死に平静を装おうとしてた。
「その時、野村さんハンカチを濡らして僕に渡してくれて。『大丈夫ですか?』って声をかけてくれたんです。すごく嬉しかった」
そうだ、面接を待つスーツ姿の人の中で、パイプ椅子に座りじっとうつむいていた男の人。
手を握りしめじっと暑さと具合の悪さを堪えてる彼を見つけた時、その姿が自分の重なったんだ。
辛くても、我慢してやりすごせるならその方が楽。
私も小さな頃からずっとそうやって、手を握りしめて我慢して来てたから。
目の前の彼の気持ちがすごくよくわかった。
必死に平気なフリをしているけど、本当はすごくつらいんだって。
「面接会場にいた他の人は、僕が具合悪くなったっておかまいなしで、逆にライバルがひとり減ったくらいにしか思ってなかった。それなのに、わざわざハンカチを水で冷やして駆けつけてくれた野村さんの気持ちがすごく嬉しくて」
そう言いながら沼田さんは照れくさそうに笑った。
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