罪深く、私を奪って。
そうやって、沼田さんはいつも私の事を見ていてくれたんだ。
すごく嬉しかった。
私はそんな素敵な人間じゃないのに。
ただ、人に嫌われるのが怖くて周りに気を使っているだけの、憶病な人間なのに。
「いつの間にか僕はその優しさを勘違いして、自分でも望みがあるんじゃないかなんてうぬぼれた事を考えたりして。永瀬の車に乗ってる姿を見て、勝手に幻滅してあんなことしちゃって……。すいませんでした」
沼田さんはそう言って勢いよく頭を下げた。
「……沼田さんは私を美化しすぎですよ」
私はただ憶病で卑怯で優柔不断で。
自分でもいやになるくらい、本当にダメな人間なのに。
「じゃあ、どうせ失恋するなら、美化されたままで僕の事を振ってください。その方が諦めがつくから」
「…………」
「野村さん、僕はあなたの事がずっと好きでした」
振られるってわかってて告白するのはどんな気持ちなんだろう。
怖くないんだろうか。
辛くないんだろうか。
私の前で頭を下げた沼田さんは、潔くてかっこよかった。
だけど、私の胸の中にいるのは、どうしようもなく強引で意地悪で狡い男。
沼田さんの告白で、ようやく自分の気持ちに気づいた。
こうやって、ずっと私を見てくれていた人がいるのに。
まっすぐに私を好きだと言ってくれる人がいるのに。
どうしてだろう。
私が好きなのは、どうやったって頭から離れないのは……
私を優しく抱く腕。
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