罪深く、私を奪って。
「野村さんはふたりと仲がいいから、きっと結婚式とか呼ばれますよね。結婚した後も、職場で顔を合わさないといけないですよね。つらいだろうなぁ。中途半端な未練を引きずって、でも平気な顔してこの先も幸せそうな二人を見なきゃいけないなんて。考えただけで地獄ですね」
……沼田さん、それはもしかして振られた腹いせの嫌がらせですか?
あんまりな意地悪っぷりに、そんな気分になってしまう。
「でも……」
言葉に迷って俯いた私の脳裏に浮かぶのは、意地悪に笑うあの人の顔。
もし、私が告白したら。
この気持ちを伝えたら。
彼はどんな顔をするんだろう。
それを考えると怖くて。
素直な気持ちを彼にさらけ出すなんて、そんな事憶病な私にできるわけない……。
「石井は、いいやつですよ。たぶん。冷たく見えるし、感情を表に出すのが下手だから、他の奴より損してるけど」
そう言った沼田さんの言葉に、顔を上げた。
沼田さんと石井さんって、仲が良かったんだっけ……?
不思議に思っていると、
「あの入社試験の時、具合が悪い僕に気付いて何かしてくれたのは、野村さんと石井だけだった」
そう言って小さく肩を上げた。
「え……?」
「野村さんが僕にハンカチを差し出してくれた時、石井が立ち上がって案内係の社員の人に何か話してるのが見えたんです。そのすぐ後に、待合室のエアコンが強くなったのに気付いた。まぁ、ただの偶然かもしれないけど」
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