罪深く、私を奪って。
「やッ……」
やめてください。離してください。
そう言おうと口を開いた時、カツンと背後から足音が聞こえた。
その音に気付いたのか、私を抱きしめていた永瀬さんの腕が緩まる。
「なんだ、せっかくいい所だったのに。邪魔するなよ」
クスリと笑ったその視線の先を振り返ると、そこには背の高い黒髪の男。
「あ……」
そこに、石井さんがいた。
醒めた目で私たちを見て、冷たく笑う。
「悪かったな。邪魔して」
ふ、と小さく鼻で笑いながらも鋭い視線で私を睨む。
その視線に微かな軽蔑の色が混じってるような気がして、一気に体温が下がった。
「石井さん……!」
そう声を上げた私を無視して歩き去ろうとする石井さんに、思わず立ち上がる。
すると、私の腕を永瀬さんが掴んだ。
離してください。お願い……。
そう思って振り返ると、そこにはいつもと同じ明るい笑顔で笑う永瀬さんがいた。
「嘘だよ」
「え?」
「さっきの心理テスト。からかっただけだよ」
なんでそんな事を?
曲者の永瀬さんの思考は、私にはまったく理解できない。
「サンドイッチのお礼に、少しお節介をしただけだ」
クスリと笑いながら私の腕を解放した。
「行っといで。頑張って」
私には永瀬さんの思考はまったくわからないけど、永瀬さんには私の頭の中なんてお見通しらしい。
頑張ってって、何を?
なんて、わざわざ聞くまでもない。
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