罪深く、私を奪って。
心から、そう思った。
 
「さっきホテルのロビーで詩織の会社のお友達に偶然会ったんだけどね、丁度これから結納なんですって。綺麗な赤い振袖着て、素敵だったわー」
「あら、いいわねー。そういうの見るとついうちの子も早く結婚してほしいって思っちゃうわよね」
丸いテーブルを囲んで楽しそうに話す二人。
子供同士をお見合いさせようってくらいだから、頭の中は子供の結婚の夢でいっぱいらしい。
はぁ……とこっそりため息をつくと、円卓の隣に座る彼がくすりと笑った。
「そうやって言われるとさっさと結婚しろってプレッシャーかけられてるみたいで、迷惑なんだけど。ねぇ野村さん」
笑うと笑窪のできる童顔のその人が、私の顔を覗き込んでそう言った。
竹本くん。
小学校の同級生だった彼は、うっすらと思いだす10年以上前の子供の頃の姿から全く変わらず、そのまま大きくなったような印象だった。
年齢より少し幼く見える可愛らしい顔とは反対に、笑いながら思った事をはっきりと言うタイプ。
確か小学生だった頃から正直すぎるというか、デリカシーに欠けるというか。
悪気なく失言して、でもその可愛らしい笑顔で許してもらえるタイプだった。
「迷惑」という言葉に素直に頷くわけにもいかず、私は曖昧に首を傾げた。
円卓に並べられた料理は、どれも綺麗にお皿に盛られ美味しそうな湯気をたてているけど、とても食べる気にはなれずにプーアル茶を一口飲む。
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