罪深く、私を奪って。
「あのさぁ、ちょっといい?」
そんな私を見て竹本くんが突然立ち上がり私の手をとった。
「野村さんあんまり料理食べたそうじゃないし、俺も母さんたちの世間話聞いてんのつまんないから二人でそのへんブラブラしてきてもいい?」
やっぱり竹本くんは相変わらずだ。
いくら自分の母親相手とはいえ、つまんないなんて平然と言っちゃう正直さ。
私にはとても真似できない。
いや、真似しようとも思わないんだけど。
「いいわよ。母さんたち勝手に盛り上がってるから」
竹本くんのお母さんもそんな彼に慣れてるんだろう。
そう言って頷くと、にこやかに私の母に向かって話を続ける。
「ごめんなさいね。うちの息子デリカシーがなくていつもこうなの」
「いいわよ。逆にそうハッキリ言ってくれた方が気を遣わなくていいから助かるわ」
「ほら、いいって。野村さん行こう」
何が何だかわからないうちに、私と竹本くんは二人でお散歩にでも行くことになったらしい。
当然のように手をつながれ、せかされるようにその中華レストランから連れ出された。

ホテルのロビーをぶらぶらと歩きながら、繋がれたこの手はどのタイミングで離せばいいんだろうと必死に考えていると、
「そういえば野村さんってタダシと同じ会社で働いてるんだって?」
と、竹本くんに言われた。
「タダシ……?」
って、誰だっけ?
やっぱり小学校の時の同級生だっけ?
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