罪深く、私を奪って。
ちゅ、と音をたてながら、目の前の綺麗な唇が私の唇に優しく噛みついては離れる。
「俺の事をすっかり忘れてたり、他の男に簡単に抱きしめられたり、永瀬には笑顔で話してるのに、俺の顔を見ると泣きそうな顔をしたり」
「んんっ……」
「仕舞いには見合いをするとか意味わかんない事言いだすし」
何度も繰り返し唇を奪う優しいキスと。
私を責める冷たい声と。
極上の飴と辛辣な鞭。
頭がおかしくなりそうだ。
「お前にいちいち振り回される自分にイライラした。……どうしようもないくらい」
ゆっくりと唇を離して、彼はその綺麗な黒い瞳を伏せた。
「ガキの頃、お前が女子に無視されて泣いてんのに、俺は何も出来なくて。少しでもいじめがなくなればと思ってお前の事嫌いって言ったのに、逆にそれでまたお前が泣いて。あの頃の、何にも出来ない自分に戻ったみたいでイライラした」
……石井さんがそんな風に思っていてくれたなんて。
本当に、分かりづらすぎるよ。
もっと分かりやすく振り回されてよ。
そうしたら私だって、石井さんの言動ひとつひとつにあんなに苦しんだり悩んだりせずにすんだのに。
……でも、小学生の時もそうだった。
無口で大人びていて整った外見をしてるから、みんなに冷めたやつだと思われてた。
でも本当は優しくて。
不器用だから、それを人に見せられないだけで。
そんなタダシくんが、私は大好きだったんだ。
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