罪深く、私を奪って。
優しく私の体をベッドへと押し倒す彼の腕。
その腕に素直に体をまかせながら、彼の事を見上げた。
「私だけじゃなかったの?」
「ん?」
振り回されてたのは私だけじゃなかったの?
石井さんも私みたいに、些細な事に苛立ったり苦しんだりしてた?
その綺麗な余裕の笑みの裏で、悩んだりしてくれた?
どうしようもないくらい心を奪われていたのは私だけじゃなかった?
彼の長い指が私の髪をかきあげる。
そこにあるのは昨日彼がつけた赤い痣。
その痣をさらに深く刻み込もうとするように同じ場所に唇を這わせながら、低い声で苦しげに彼が囁いた。
「十分振り回されてたよ。自分が嫌になるくらい」
少し掠れたその声に胸が締め付けられた。
いつだって余裕な表情で笑う彼が、はじめて見せた焦り。
そんな彼も悔しいくらい色っぽくて、ますます私の心は彼に奪われる。
……ああ、もう限界だ。
鼓膜を震わす彼の吐息に、髪を乱す長い指先に、首筋に触れる唇の感触に。
私の理性が崩される。
首筋に、耳に、うなじに。
鎖骨に、そして、その先へと。
降り続ける甘いキスの雨。
唇が触れるたびに全身に走るしびれに、必死に声でこらえながらベッドのシーツをきゅっと掴む。
……その瞬間。
「んッ……痛い!!」
足先に鋭い痛みが走った。
「痛い?」
私の声に石井さんが胸元から顔を上げ、不思議そうな顔をする。
「まだ痛い事なんてしてないけど?」
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