罪深く、私を奪って。
うーん、石井さんがスイーツを食べる姿が想像できない。
やっぱり居酒屋とか、お肉とかかなぁ。
男の人と食事なんてめったに行かないからわかんないよ。
なんて、頭の中で色々考えてるといつの間にか駐車場についたようで、昨日乗ったばかりの石井さんの黒い車の前にいた。
「どこでもいいなら、俺の知ってる店に行くけど」
いつまでも答えない私に、彼はうんざりしたように言う。
「……はい」
しょんぼりと頷いた私を見て、石井さんがため息をついた。
きっと、食べたいものも決められない優柔不断な女だって呆れられたんだろうな。
亜紀さんなら、こんな時すぐに行くお店を決めるだろう。
バタン、と音をたててドアを閉めた石井さんの姿を見ながら、少し沈んだ気分で彼の車に乗り込んだ。

車に乗って向かったのは、賑やかな繁華街からは少し離れた一軒のお店。
小さな駐車スペースに器用に車を止め店に入ると、そこはお洒落なダイニングバーだった。
南仏風のシンプルで温かみのあるインテリアと、照明を抑えられた店内から見えるライトアップされたパティオ風の中庭。
開放感のある清潔な店内。
「わぁ、すてき……」
思わずそうつぶやくと、石井さんは、
「女って、こういう雰囲気の店好きだよな」
と、私の反応にくすりと笑った。
きっと亜紀さんもお気に入りのお店なんだろうな。
お店の中もカップルや女性客ばかりだし。
私たちは店の奥の個室に通された。
< 31 / 193 >

この作品をシェア

pagetop