罪深く、私を奪って。
ポケットから財布を取り出した永瀬さんに、慌てて首を振って立ち上がった。
「いいですよ。もう帰る所なんで。永瀬さんもまだお仕事中ですよね? 戻らなくて大丈夫ですか?」
「うーん、仕事も大事だけど」
永瀬さんは立ち上がった私に一歩近づくと、テーブルに軽く腰をかけて長い足を組む。
永瀬さん、背が高いなぁ。
テーブルに腰掛けてるのに、視線の高さが立ってる私と変わらない。
石井さんも背が高いなと思ったけど、永瀬さんも同じくらいあるかな……。
「今は仕事より、詩織ちゃんの方が大事かも」
「へ?」
今永瀬さん、私の方が大事って言った?
それって、どういう……?
ぼんやりしていた私に、不意打ちで言われた言葉の意味が理解できなくて、思わず瞬きを繰り返す。
「へ? だって! 可愛いね詩織ちゃん」
間抜けな声を出した私がツボにはまったのか、ケラケラと声を出して笑う永瀬さん。
なんだ、からかわれたのか。
突然変なこと言うから、びっくりしたじゃない。
「あ、からかってないよ。最近の詩織ちゃんの様子変だから気になってたんだってば」
私の表情から気持ちを読み取ったのか、慌てて永瀬さんがそう言った。
「……私の様子、変でしたか?」
「うん。何かあったの? いっつもため息ついたり、ぼーっと考え事したり。何かに苛立ってるみたいに見えたけど」
そう言われて、思わず長いため息が出た。
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