罪深く、私を奪って。
人を怒らせたくないから、人に嫌われたくないから。
口をつぐんで黙り込んで周りの顔色をうかがって、誰かが私のかわりに選んでくれるのをただじっと待つようになった。
そんな恐怖心が元々の優柔不断な性格に拍車をかけて、気付いたら自分でも嫌になるくらい卑屈で憶病な自分になっていた。
「それから中学に入って、自然と女の子たちと話したり遊んだりできるようになったんですけど。それでもやっぱりどこかで、また知らないうちに人を怒らせて、あの時みたいにひとりぼっちになっちゃったらどうしよう……って思ってしまうんです」
「ふーん」
ライターが火を灯す、カチッという音が聞こえて、また車内に煙草の香りが漂った。
「そっか。だから詩織ちゃんは優柔不断な自分が嫌いなんだ」
永瀬さんの、煙草を吸いながらハンドルを握るその姿が様になりすぎてて、思わずみとれそうになる。
いつも明るく笑っているクセに、運転するその横顔はしっかり『大人の男』の顔で。
そのギャップに、少しだけドキドキした。
「でも、俺はいいと思うよ。手がかかって頑固で優柔不断な詩織ちゃん、好きだよ」
前を向いたまま、真顔のままで永瀬さんは優しくそう言った。
好きって、そんなストレートに言われるのに慣れてなくて、私は慌てて永瀬さんの横顔から目を反らす。
そんな私の動揺なんて全部見透かしてるみたいに、煙草を咥えたままでクスクス笑う永瀬さん。
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