罪深く、私を奪って。
その顔はいつもの私をからかうあの笑顔に戻っていた。
「いっつも亜紀みたいなズバズバ言う気の強い女と一緒にいるから、詩織ちゃんみたいに控え目な女の子見ると守ってあげたくなる」
「そんな調子のいい事言わないでください」
永瀬さんが女の子を口説くのなんて挨拶みたいなものだってわかってるのに、動揺してしまった自分が悔しい。
「おかしい。なんで詩織ちゃん俺にはそんなに冷たいんだ」
「それは永瀬さんがいつも私を動揺させてからかうからです」
「でもさ。小学生だった小さな詩織ちゃんは頑張ったんだね。女の子たちに無視されても相手を嫌いになる前に自分が悪いんだって、悪い所を直そうって思える優しい子だったんだね。えらいえらい」
まるで小さい子を褒めるみたいな口調で、優しく私の頭をなでる永瀬さんの大きな手に、ちょっとだけ泣きそうになった。
「子供みたいにあやさないでください」
なんて強がりを言いながら、少し潤んだ瞳を見られないように、私は永瀬さんに背を向けて外の景色を見ているふりをした。

キュッとブレーキの音がして車が止まった。
気がつけば窓の外は見慣れた景色。
「詩織ちゃんちってこのアパート?」
「あ、はいそうです。ありがとうございます」
もう着いたんだ。
やっぱり車だと家まであっという間だなぁ。
なんて思いながらバッグを握り直すと、その手の上に、大きな手のひらが重なった。
「待って」
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