罪深く、私を奪って。

「……え？」
低い声で気を付けろと言われて、驚いて瞬きをした。
「気を付けろって、何にですか？」
「中傷のメールが流れてるとか言われたんだろ？」
「はい……」
気を付けろ、なんて言われたって。
確かに私を中傷するメールが流れてるらしいけど、直接嫌がらせを受けてるわけじゃないし、永瀬さんが調べてくれるって言うのを信じて大人しく待つ事しかできない。
「大丈夫です。なるべく気にしないようにしますから」
半分強がりながらそう言うと、
「いや、そうじゃなくて……」
石井さんはため息をついた。
そうじゃなくて？
じゃあ、どういう意味だろう。
不思議に思いながら隣で運転する石井さんを見ると、少し落ち着かない様子で、指先がコツコツと小刻みにハンドルを叩いていた。
「あの、煙草吸っても大丈夫ですよ」
きっと煙草を吸いたいんだろうな。
そう思って声をかけると石井さんは驚いた表情で私を見た。
「は？」
「あの、煙草我慢してるのかなと思って……」
違ったのかな。
別に我慢してるわけじゃなくて、たまたま吸ってなかっただけなのかな。
それとも禁煙中だったとか……。
余計な事言っちゃったかな、と焦りながら石井さんの顔を見ると、
「煙草、平気なんだ？」
石井さんは確認するように私を見た。
まっすぐに私を見た目は、驚くほど優しくて思わず顔を反らした。