罪深く、私を奪って。

条件反射のようにそう言ったけど、頭はまだ真っ白のままだった。
その私を見て、石井さんは大きくため息をつく。
「大丈夫なわけないよな。今日、このまま一人でこの部屋にいるのなんて無理だろ。亜紀の家にでも泊めてもらうか？　あいつまだ残業だろうけど……」
携帯電話を取り出しながらそう言った石井さんの手を思わず掴んだ。
「だ、大丈夫です！　本当に」
亜紀さんにそんな迷惑かけられない。
それに……
そんな事ないって信じてはいるけど、どうしても胸に浮かんでしまう疑念。
『なんか送信元ははっきりわかんないんだけど、大元は営業部のパソコンから流れたみたいだよ。文面的に女子社員じゃないかと思うんだけど』
そう言った沼田さんの言葉。
営業部の女子社員。
もしそれが、亜紀さんだったら……？
「大丈夫です。本当に」
きつく唇をかんで、必死に声が震えないように力を込めてそう繰り返す私を見て、石井さんがうんざりしたようにため息をついた。
「わかった。じゃあ携帯出して」
「はい……？」
なんで急に携帯？
ぽかんとしながらバッグから携帯電話を取り出すと、すぐに彼に奪われた。
石井さんは慣れた手付きで携帯を操作すると、私に手渡した。
自分の手に戻ってきたその画面を見ると、そこには11ケタの数字が登録してあった。
「何かあったらすぐに電話してこい」
強い視線で私を見つめながらそう言う。
何かあったら、なんて。