舞子姉さんの古着屋さん奮闘記
 「喫茶店、喫茶店、、、。」 「あらあらどうしたの? 山田さん。」
「いやね、このスペースで喫茶店をって話が出てきたんだよ。」 「へえ、いいじゃない。 やりましょうよ。」
 「古着屋さんもこれからやっと動くのに、、、。」 「先手必勝って言葉も有るじゃない。」
「そりゃそうだけどさあ、、、、、。」 「んもう、煮え切らない人ねえ。」
 康子さんは魚屋だった辺りをグルリト一回り。 「調理台も有るし冷蔵庫も有るしテーブルのスペースも有るし、いい感じねえ。」
「どうしたの?」 そこへ真子がやってきた。
「いやいや、喫茶店をって言うからこの辺りを見てたのよ。」 「いいでしょう?」
「そうねえ。 うちは商売じゃないからやれるわね。」 「決まった。 後は山田さんを説得だ。」
「話なら聞いてたよ。」 「何 一反木綿みたいに立ってるのよ?」
「一反木綿とはひどいなあ。」 「だってそーーーーーーっと聞いてるんだもん。 気持ち悪いわよ。」
「ごめんごめん。 んで、どうするんだ?」 「何が?」
「喫茶店だよ。 喫茶店。」 「そうねえ、準備にはまだまだ掛かるからオープンは秋以降ね。」
「で、どうやってやるの?」 「それは今検討中。」
「なあんだ。」 「ほらまた、、、。」
 「山田さん それは無いわよ。 せっかくやる気になってるんだから、、、。」 「ごめんごめん。」
 そんなわけで今日は最後の確認をしております。 「利用者は5人ね。」
「お昼は直配センターに頼んだわ。」 「オッケーオッケー。 作業手順は?」
「午前中は分別作業をやってもらいます。 洗わなきゃいけない物もたーーーーーーーっくさん入ってるから。」 「たーーーーーーーーっくさんね?」
「何よ?」 「それで、、、昼からは洗濯とリメークの相談を。」
「そうだねえ。」 「なんかさあ、下着がいっぱい入ってる袋も何個か有るのよ。」 「見た見た。 ガラパンとかババパンとか入ってるやつでしょう?」
「あれはどうする?」 「テーブルクロスとか財布とか作れる物に作り替えればいいじゃない。」
「ガラパンの財布ねえ。」 山田は作業場の棚を見回した。
「またまた変なことを考えてるでしょう? 山田さん。」 「別に、、、。」
「その顔は怪しいなあ。 康子さんのパンツとか想像してるんじゃないの?」 「あらやだ。 何で私?」
「だって山田さんさあ、康子さんばかり見てるんだもん。」 「ほんとなの? 奥さんも居るのに?」
「何でそういう話になるんだよ?」 「山田さんがパンツばかり見てたからよ。」
「やだなあ。 おじさんはこれだから、、、。」 舞子さんはみんなの話を聞きながらボソッと一言。
「飢えてるのねえ。」 「だってよ。 ほら。」
 山田はみんなが盛り上がっている間に外へ出ていった。 「活動開始だなあ。」
「さてと、、、何とか出来上がったわね。」 「そうねえ。 明日が楽しみだわ。」
「利用者さんはどうしてる?」 「なんかさあ待ち切れないんだって。」
「そっか。 おばあちゃんたちだもんなあ。 賑やかになりそうだね。」 「そりゃあ、、、ねえ。」
 「じゃあ今日は早めに終わって食べ放題に行こう。」 「やったあ。 山田さんのおごりよね? も、ち、ろ、ん。」
「おいおい、、、。」 「さっき約束したでしょう?」
「うわうわうわ、噴火しそうだ。」 「そうよ。 真子が怒ると怖いのよーーー。」
「その顔で?」 「何か言った? ねえ、康子さん。」
「言ってないわよ。 言ってないってば。」 「怪しいなあ。 言ったでしょう?」
 康子ザウルスと真子ザウルスの睨み合いが始まったらしい。 「睨むと長いのよねえ、あの二人。」
舞子さんも片付けをしながら見ている。 「やめないか? 行くぞーーーー。」
「ああ、待ってよーーーー! 待ってったらーーーー。」 真子は駐車場へ向かった山田を追い掛けて出ていった。
「しょうがないんだから、、、。」 「出来てるんじゃないの? あの二人。」
「そうには見えないけどなあ。」 「そっか。 山田さんは真子に弱いからなあ。」
「そうなの?」 「あの二人さあ、前にも同じ仕事をしてたのよ。」
「同じ仕事?」 「そうそう。 確かね、何かの調査会社だったっけ。」
「へえ、、、。 でもあの二人は楽しそうよねえ。」 舞子さんは半分羨ましそうな、半分うざそうな顔をしている。
 「行くぞーーーーーー。」 「そんなに叫ばなくてもいいわよ。 聞こえてるから。」
「だって真子が、、、。」 「またまた真子さんなの? 仲いいわねえ。」
「私は嫌いなんだけどなあ、このおじさん。」 「へえ、ずーーーーーーーっとくっ付いてるやん。」
「そりゃあ、山田さんが心配だからよ。」 「何が心配なの?」
 「舞子さん そこは突っ込んじゃダメだって。」 「そっか。 聖域だったわね。」
「何だい 聖域って?」 「まあ、いいからいいから。 焼肉食べにレッツゴー!」
 そんなわけで二台の車で食べ放題のお店 うまかもんにやってきました。 山だと真子さん、それに康子さんと舞子さん、それともう一台、新次郎君と絹子さんね。
新次郎君たちは利用者さんの送迎もやってくれます。 あんまり表には出てこない人たちです。
 「さあ食べるぞーーーーー。」 「だからさあ、そんなに吠えなくてもいいって。」
「ごめんごめん。」 「真子ちゃんが居るから嬉しいんでしょう?」
「そうだねえ、、、って何を言わせるんだよ?」 「おじさんはこれだから嫌なのよねえ。」
「お互い様じゃないの。」 そこへ舞子さんがまたまたぼやきました。
 真子さん 肉と野菜を持ってきて網の上に載せていきます。 それを康子さんがジーッと見詰めてます。
「なんか二人とも飢えてるライオンって感じだなあ。」 誰かがボソッと呟きました。
「だからそれは言わないの。」 舞子さんが焦って口止めを、、、。
「何か言ったの?」 「ほらほら、気付かれたでしょう?」
「何か言ったのね? ねえ、山田さん?」 「何で俺なんだよ?」
「一番怪しいんだもん。」 真子が山田を睨んでいると、、、。
「あっちよ あっち。」 康子さんが新次郎君を指差しました。
「えーーーーーーーーーー? 私の王子様が?」 「うるさい女だなあ。」
 ビールを飲んでいた山田の一言に舞子さんは思わず吹き出しました。 「しょうもな、、、。」
何か分からないけどこの人たちはこうしてこれからもずーーーーーーっとやり合うんでしょうねえ。 ほんとにご苦労様。
< 6 / 7 >

この作品をシェア

pagetop