地球最後の日

少しして泣き止んだあと。


「「あ、あのさっ!」」


ピッタリと重なった二つの声にふたりして涙でぐちゃぐちゃになった顔を見合わせてくすりと笑う。


「お先にどうぞ」と理沙が言ってくれたので私はポケットから手紙を出した。

「これを理沙に渡したくて」

もう、気恥ずかしさとか心変わりとかそういうのは無くて、読んで欲しい、その一心でそれを理沙の前に差し出した。


「う、うそ…っ」



そう驚いて理沙が私に差し出したものも手紙だった。


「えっ!」


うそ、そんなことってある?

ふたりしてお互いに向けた手紙を書いているだなんて。


「実はね、今日の朝本当は寝坊なんてしてないの」

「え?」

今朝、《ごめん、遅刻した先に行ってて!》ってメッセージが来たはずだけど…。

「この手紙を書いてたら苦戦しちゃって朝方までやってたら時間が過ぎてたの」


そう、だったんだ…。


「でも、今日一日、そのことをずっと後悔してた。だって、ずっとすれ違って会えなかったもんっ。
1時間目の休み時間に美優の教室に行ったら一生懸命提出物集めてるし、2時間目の休み時間は教室にいないし、3時間目は移動教室で行けなかったし、休み時間はいつも図書委員やってるの知ってたから花の水やり後回しにして待ってたのに来ないし!なのに図書委員の子に聞いてみたら代わってほしいって言われたって」


理沙は今日の出来事をひと息に言ってのけた。

その威勢にのまれそうになったけどこっちにだって言い分はあるんだからねっ。


「それを言ったら私だってっ。
朝いちばんで手紙を渡したかったのに理沙遅れるし、1時間目の休み時間は委員長に提出物の回収頼まれるし、2時間目の休み時間は先生に雑用任されるし、3時間目の休み時間は後輩にお願い事されるし、昼休みも理沙探しに行ったらいないし!おまけに理沙だと思って声かけた子が全然別人で思いっきり恥かいたんだからっ!」


あの時の羞恥心と言ったら…!
あれは一生忘れられない思い出になったよ…。

「それに今も!先に帰っててーって言わなければ待ってたのに!」


「それは、手紙失くしちゃって。でも失くしたのが知られちゃったらって…。サプライズで渡したかったんだもん!」

サプライズなんて言われたらぐうの音もでないじゃん…。


「美優なら絶対ゾウのはな公園に行ってくれると思ったから行って待ってたのに来ないしぃ…!」

「え、ゾウのはな公園…?ならさっき行ったけど」


「えぇ?」


ふたりして目を見合わせて。


「「ぷっ、あはははははは!」」


お腹を抱えて笑った。


「あたしたちなにやってるんだろう」

理沙は目尻の涙を拭いながら言った。

「ほんとだよ」

私も笑い涙を拭った。


「ねぇ、理沙。手紙、読んでいい?」


「もちろん。あたしもいい?」


「もちろん」


もうぐしゃぐしゃになりつつある手紙の便せんをそった開けて中から手紙を取り出した。

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