エリート外科医の蕩ける治療
前と同様、手を繋いだ。杏子の手は小さくて柔らかくて可愛らしい。この手を離したくないなんて言ったら、杏子はどう思うだろうか。

言えない代わりに杏子の手は柔らかいと伝えれば、「またそうやってドキドキさせて」と恥じらった。こんなことでドキドキしてくれるなら願ったり叶ったりだ。

「オキシトシンだっけ?」

「おっ、偉いな。学習してる」

「ふふん」

「ふっ、得意気」

「完治目指してるんで!」

満面の笑みで言われ、ぐっと息を飲む。杏子にとっての俺は、秘密を共有しただけのだだの医者でしかない。それ以上でもそれ以下でもないのだ。

俺の気持ちはふわっと宙に浮いた。俺が悪いことは大前提として、せめて杏子が傷つかないように精一杯努めよう。

「そうか、じゃあ主治医として頑張らないとな」

繋いでいる手を引き寄せて、手の甲に口づける。杏子はまた真っ赤になって慌てだした。そんな姿も可愛いと思う。

「先生、今日は助けてくれてありがとうございました」

「ん?」

「彼氏のフリしてくれて」

「あー。杏子につられてイケメン彼氏って言ってしまったけど」

「ふふっ、イケメンだから問題ないでしょ」

「イケメンだって思ってくれてるの?」

「イケメンでしょ。先生モテそうだもん。患者さんもキャーキャー言ってますよ。佐々木先生とどっちがモテるかな?」

「確かに俊介はモテそうだな」

「優しいですもんね。笑顔が素敵」

「……杏子さ、今は俺と恋人なのに、他の男を褒める?」

ああ、ダメだな。俺はもう、杏子を患者として見られない。一人の女性として、杏子のことを見ている。この気持ちはもしかして、いや、もしかしなくても、俺は杏子のことを好きになっているんだろう。

可愛くて愛しくて仕方がない。
いつの間にか俺は杏子にどハマりしている。

本当に、いつの間にこんな感情が芽生えたんだ……。
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