偽装婚約しませんか!?
 無礼がないように細心の注意を払っていたが、本人からの要請であれば致し方ない。ヴィオラは眉尻を下げて謝罪した。

「お気を悪くさせてしまい、申し訳ございません。もっとフランクな感じでいきますね。ええっと……では。やあ、ごきげんよう愛しの婚約者殿」
「ちょっと待て。それは男性側の台詞だろう」
「……あれ?」
「何を不思議そうな顔をしている。君は淑女だ。自分の性別を忘れてはいけない」
「そうでした。恋仲であると強調される台詞を考えていたら、つい。ラブラブな雰囲気を出せるような女性側の挨拶を考えます。……ローレンスさま。どうか、もう一度チャンスを」
「失敗は成功のもととも言う。何度でも挑戦するがいい」

 ローレンスは鷹揚に頷く。後ろで給仕の準備をしていた従者は遠い目をしていた。

 ◇◆◇

 それから一ヶ月後。
 寝る前に恋物語を熟読してきた成果か、仲のよい婚約者アピールはだいぶ板についてきた。最先端の流行に詳しくないヴィオラのために、オペラの王族専用ボックス席に招待したローレンスは王都の店も案内してくれた。従者と護衛を引き連れながら。
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