偽装婚約しませんか!?
 王族御用達の老舗洋菓子店は宝石のように輝くチョコレートが並び、いくつかお土産用に買ってもらって顔がゆるみっぱなしだった。だが次の貴族街の宝飾店はおそろしい金額とわかるほどの大粒のダイヤモンドやピンクサファイアが惜しげもなく並び、場違い感が半端なかった。半泣きでローレンスの服の裾をつかみ、店を後にした。
 立派な時計台から景色を見下ろしたり、可愛い雑貨店を見たりしていると夕刻の鐘が鳴り響いた。帰りの馬車まで歩く途中、食欲をそそる串焼きの屋台を名残惜しげに見ていたら「君はお菓子以外も食欲が旺盛だったな……」とため息をつき、おごってくれた。大変美味だった。
 それからも熱愛アピールは続いた。物理的距離も近づき、東屋で並んで座って耳に手を当て内緒話もした。実際はしりとりだったり、幼少期の恥ずかしい暴露話だったり、恋愛とは関係ない内容だったが。それでも周囲には仲睦まじい光景に見えたらしい。
 そんなわけで一緒に過ごす時間が長くなるにつれて緊張することもなくなり、一日のご褒美のデザートをヴィオラは恍惚の表情で堪能していた。毎日幸せだ。

「君はときどき、口調が崩れるな。そちらが素か?」

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