偽装婚約しませんか!?
 向かいの席に座るローレンスが呆れ気味に肘をつき、ヴィオラは背筋を正した。

「へあっ……う、すみません。完全に無意識でした。これでもボロを出さないようにしているのですが、気を抜くと出てしまうようです。ですが、殿下に聞かせる言葉ではありませんでしたね。以後気をつけます……」
「いや、別に不快に思っているわけではないが。まあ、貴族社会でうっかり出さないように注意したほうがいいな。君が侮られる」
「うう、そうですよね。猫かぶりが続けられるように頑張ります」
「猫かぶり」
「大きな猫さんなら大丈夫でしょうか。なんか強そうですし、簡単に剥がれないかもしれません。こういうのは気合いとイメージが大事だと乳母が申しておりました」

 真剣に言ったのに、ローレンスはパッとうつむき肩を震わせた。
 彼はめったに笑わない。冷静沈着の王子と噂される程度には感情を抑制しており、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
 しかしそう見せかけているだけで、実は笑いの沸点が低いのだろうか。必死に声を抑える様子は普段と印象が異なる。いつもの威厳もすっかり消え去っている。
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