苦手な同僚が同担だった件について。


 しばらく無言で歩いていたが、そろそろ大丈夫だろうというタイミングを見計らって竜矢くんが言った。


「駅の反対側にこぢんまりしたバーがあるんだ。そこでどう?」
「いいよ」
「よし!」
「でも、大丈夫なの? 結構飲まされたんでしょ?」
「ウーロンハイと見せかけてウーロン茶ずっと飲んでた」


 悪戯をする子どもみたいな笑みを浮かべる竜矢くんに、思わず笑いがこぼれてしまう。


「流石だね」
「山辺さんはとりあえず褒めときゃ何とかなるからね」
「さっきはありがとう。助けてくれて」
「いや、俺が嫌だっただけ」
「嫌だった?」
「かけるにベタベタされるの、嫌だったから」


 私にベタベタされるのが、嫌だった……?
 トクン、と心臓が飛び跳ねる。


「てゆーか、かけるが飲み会来るなんて珍しいよね」
「あ……たまには、参加してみようと思って」
「そう」


 なんか竜矢くん、ちょっと不機嫌そう……?


「楽しかった?」
「楽しかったよ。今まであんまり話したことない人とも話せて楽しかった」
「ふうん……」
「ねぇ、なんか怒ってる?」


 暗いから顔がよく見えなくてわからないけど、声色は明らかに不機嫌そうだ。


「怒ってないよ。自分の心の狭さに自己嫌悪してるけど」
「どういうこと?」
「かけるの良いところ、他の人に知られたくなかったなぁって……」


 え……? 何それ、どういうこと?

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