苦手な同僚が同担だった件について。


 すぐに離れたと思った直後に目が合って――また奪われる。
 今度はすぐには離れなかった。触れてはなぞり、少し離れてはくっついてを繰り返す。

 ゆっくり、でも確かに熱を帯びて心臓はどんどん高鳴っていく。
 だけど心臓の音さえも心地良い。

 息継ぎの合間に重ねられ、食べられていつの間にか絡まり合う舌。


「ん……っ」


 いつの間にか私の背中はソファにくっついていた。
 腕を彼の首元に回し、矢継ぎ早に降り注がれる唇に夢中になる。


「っ、あ……っ」


 彼の手が自分の胸に触れ、思わずピクリと反応してしまった。
 その瞬間、我に返ったように竜矢くんが私から離れて手を引っ込める。


「ごめん……がっつきすぎた」
「ううん……」


 竜矢くんは私の手を引いて抱き起こしてくれた。


「いや、ごめん。今日はそういうことはしないって決めてたのに……つい」
「え……そう、なの?」
「かけるのこと、本当に大事にしたいから」
「っ!」
「こんなに好きになったの、かけるが初めてなんだ」
「っ、私も……」


 何故だかものすごく泣きたい気持ちになった。
 すごく嬉しくて幸せなのに、何故か涙が出そうになって、自分から彼をぎゅっと抱きしめた。


「私も竜矢くんのこと大切にするね……」
「うん……ありがとう」


 エルナイのデビュー曲にこんな歌詞がある。

 どんなにつらくて困難な道のりも、君と出会うためのものだとしたら、全部正解だと思える。
 正にそう、竜矢くんと出会うためのものだとしたら過去の自分も肯定してあげられる気がする。


「竜矢くん、大好き」
「俺も」


 そう言って何度目かのキスを交わした。

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