苦手な同僚が同担だった件について。


「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした~」


 今日も一日業務を終えて、帰ろうとする時。


「!?」


 急に誰かに強く腕を引っ張られ、誰もいない会議室に連れ込まれる。
 何が起きたのだろうと戸惑っている間に、ぎゅうっと強く抱きしめられていた。


「えっ……、竜矢くん!?」
「……」


 竜矢くんは何も言わずにただただ抱きしめる。
 竜矢くんと直接触れ合うのは久々だ。だけど、会社はまずい……!


「ちょっと竜矢くん、離して。誰かに見られたら……」
「だって、かけるに触れてなくて限界なんだよ」


 触れてなくて、って……。
 確かに私も寂しいなって思っていたけど……。


「でも会社はダメ! 誰か来ちゃうでしょ?」
「大丈夫。この会議室、ミーティング始まる十分前から取ってあるからまだ誰も来ないよ」
「それって良くないんじゃないの?」
「これから社長に進捗報告だから一人で整理する時間が欲しかったんだよ。そしたらかけるの姿が見えたから」


 それで連れ込まれたってこと……?


「お願い、三分だけでいいから」


 そんなこと言われて、断れるわけないじゃない。
 私だって、本当はずっと竜矢くんと一緒にいたかったんだから。


「……わかった」


 そっと彼の背中に腕を回す。ふわりと香る彼の優しい香りが鼻孔をくすぐる。
 私の大好きな竜矢くんの匂いだと思って、安心する。

< 116 / 140 >

この作品をシェア

pagetop