苦手な同僚が同担だった件について。


 竜矢くんの声はちょっと鼻声っぽく聞こえた。


「本当はずっと怖かったんだ。俺は誰とも上手くいかない、誰のことも好きになれないし信じてもらえないんじゃないかって」
「うん」
「俺もかけるが好き。すげー好き」
「私も好きだよ」


 大人になればなるほど「好き」という言葉を言わなくなる。
 でも、ちゃんと言葉にしなければ伝わらない。

 だから何度でも伝えたい。

 竜矢くんの大きな手が私の頬に触れる。
 今じゃないとは思いつつ、唐突に思いついてしまった疑問を尋ねてみた。


「ねぇ、もしも桂馬が私のこと好きになったらどうする?」
「え?」
「いや、なんか気になってしまって」
「桂馬はファンに手を出すようなこと絶対しない。解釈違い」
「ふふっ」


 あまりにも真顔で言い切るから思わず笑ってしまった。


「確かにそうだね……!」
「ていうかやめてよ。桂馬に恋人って想像でも考えたくないな」
「そこはそっちに嫉妬するんだ?」
「かけるだってそうだろ」
「それはそう」


 やっぱり推しは別格、というか別次元にいる。


「絶対ないと言い切れるけど、桂馬でもかけるのことは渡さないけどな」
「……ん」


 再び顔が近づいて互いに引き寄せられ、世界の輪郭がぼやけた。
 唇が重なり合い、小鳥がついばむように何度も口づけられる。

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