苦手な同僚が同担だった件について。


「ちょっと、やだ……!」
「あはは」


 やめて、と訴えたくて振り返って睨み付けたのに、逆効果だったのかくいっと顎を持ち上げられて唇を奪われる。


「ん……っ」


 ダメだ、このままではのぼせてしまう。


「先に出るねっ」
「え~」


 このまま流されていたら朝から……なんてことになりかねない。
 それもやぶさかでないけれど、七時からの朝食に遅れてしまう。

 とにかく着替えて髪の毛を乾かそうとしていると、いつの間にか上がっていた竜矢くんが「貸して」と言った。
 ドライヤーを渡すと、そのまま私の髪を乾かしてくれる。


「かけるは髪も綺麗だよね」
「ありがとう」


 ドライヤーの風と音で竜矢くんの声がいまいちよく聞こえないので、特にそれ以上の会話はせずに何となくスマホをいじり始めた。
 メールが一件届いていた。


「あーーーーーっ!!」


 メールを見た瞬間、思わずドライヤーをかき消すくらいの大声をあげてしまう。


「えっ、何!?」
「竜矢くんっ! 見て!!」


 竜也くんにスマホの画面を突き付ける。メールの文面を追っている竜矢くんの表情が、みるみるうちに変わっていった。


「エルナイドームツアー!?」
「ねぇ、ドームだって。夢じゃないよね?」


 それはずっと二人が夢見て目標にしていた、ドームツアーのお知らせだった。
 ファンもずっと心待ちにしていた。ずっとずっとドームに立つ桂馬と香が見たかった。


「やばい、どうしよう……」
「めちゃくちゃうれしい……」


 甘い雰囲気はどこへやら、一瞬にしてエルナイ一色になってしまう私たち。
 でもこれが私たちらしいなと思う。

 二人きりで甘い夜を過ごして、推しのドームツアー発表に泣く程喜んで。
 こんなに幸せな朝は初めてだった。
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