苦手な同僚が同担だった件について。


 * * *


 退勤した私は真っ直ぐ帰宅するのではなく、会社から離れたカフェでコーヒーを飲んでいた。
 これから飛鳥竜矢と会うためである。

 会社の人と社外で会いたくないと思っていたのに、こんなことになるなんて。
 じわじわと自分の失態を認識して億劫になっていた。

 だけどそうも言っていられない。
 何としても黙っていてもらわないと。


「お疲れ様! 遅くなりました!」


 やたらと元気な声で飛鳥竜矢がやって来る。


「ごめんなさい、一本電話対応してたら遅くなっちゃいました」
「大丈夫です。何か買われたらどうですか?」
「あ、そうだねー」


 そう言うと彼はレジカウンターに行き、私と同じコーヒーを注文した。


「ごめんね、遅くなって。時間作ってくれてありがとう」
「いえ、私も飛鳥さんにお話がありましたので」
「えっ、なになに?」


 何をそんなに期待されているのか知らないが、ワクワクした表情で見つめられても困る。
 私はコーヒーカップを置き、真っ直ぐ彼の目を見た。


「今日見たこと、誰にも言わないで欲しいんです」


 すると飛鳥さんは何度か瞬きしてから聞き返す。


「今日見たことって、角田さんが桂馬のブロマイド持ち歩くくらいファンだってこと?」
「……はい」


 何故わざわざ言葉にしたのか。
 こうして突きつけられる側の気持ちになってみろと言いたい。


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