苦手な同僚が同担だった件について。


 一体何がどうしてこうなったのだろう……?
 先程までの憂鬱な気分が吹き飛んでしまうくらいの勢いだ。


「かける、今日はもう帰る? 家の近くまで送るよ」
「え……でも飛鳥さんは、」
「ん?」
「……じゃなくて、竜矢くんの家は反対方向でしょ?」
「でもあんなの見ちゃったら心配だから、送らせて」
「あ、ありがとう」


 そうか、彼は私のことを気遣ってくれているんだ。
 きっと私が話したくないと思っていたことを察して、紛らわせようとしてくれたのだ。

 優しいな……。
 気持ちが弱っているせいなのか、彼の優しさが素直に心に沁みる。

 それと同時に黄色信号が点滅する。
 ダメ、絶対ダメ。そこで止まりなさい。
 その先に進んではいけない、と――。


「……かける?」


 心配そうに顔を覗き込まれてハッとした。


「大丈夫? やっぱり帰ろう」
「あ……うん、ごめんね」


 せっかくの原宿食べ歩きだったのに、結果食べられたのはいちご飴とローストビーフ丼だけだった。
 本当はこの後も楽しく原宿散策するはずだったのに。

 でも、もう少し一緒にいたいなんて、とてもじゃないけど言えない。


「……本当にごめんなさい」
「全然いいって! 今度はパーっと飲みながら鑑賞会しようよ」
「ふふ、いいね」


 結局竜矢くんは最後まで深く尋ねてこなかった。


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