『可愛い君へ』
そんなことを思いながら、吉川との話の流れでふと朝霞を見ると、朝霞がギロリと花苗を睨み付けていた。
ひゃあ!と花苗は心で悲鳴を上げる。
「ちょっと吉川。さっさと自分の席へ帰ってよ。朝霞部長に睨まれちゃったじゃない。無駄話をする女子社員だってことで査定に響いちゃったらどうしてくれるわけ?」
吉川も朝霞の方を眺める。
「お前、自意識過剰なんじゃねーの?朝霞部長がこっち見るわけないだろ?」
「ええー・・・」
そう言われて再び見れば、もう朝霞は書類に目を落としている。
うーん、確かにさっき目が合ったと思ったんだけど。
「ねえ。谷口さん。シュレッターが使えないんだけど。」
1年先輩の美里先輩に肩を叩かれた花苗は笑顔で答えた。
「はーい。了解です!」
花苗はすぐにシュレッターに詰まった紙片の山を、ゴミ袋に入れて処分した。