隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

文庫本

 翌日、いつものように大学の講義へと向かった。新年度ということもあり、期待と不安の入り混じった表情をする新入生が目立ち、なんだか新鮮な感じがする。自分も1年前はあんな感じだったのかと懐かしさすら覚えながら、新しく受講する講義の教室へと入って行った。


「あ…」

 ───同じ学科なのであり得る話だし、昨年度だって被った講義も少なくないので別にどうってことないはずなのに、斉木里香の姿を認めて俺は一瞬息を飲んだ。

 それはきっと昨日初めて斉木里香の意外とも言える不可解な行動を目の当たりにしたからだろう。

 斉木さんはというと、いつもと何も変わらない様子だが一緒にいる友人はおらず一人で静かに席に着いていた。

 教室の入り口で立ち止まった俺は、彼女の席を通り越して3列ほど後ろの席に着くことにした。
< 12 / 76 >

この作品をシェア

pagetop