隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

 100分にも及ぶ講義が終わり、お昼の時間となった。今日は確か紘は3限からだったし、講義を受けていた中に仲の良い人もいなかったので一人で学食にでも行こうかなと考えを巡らせる。一方で斉木さんたちは、大学の近くにあるタイ料理のお店でテイクアウトしようと話しながら早々に教室を後にしていた。

 学食の日替わり定食と週替わり定食なんだろうな、カレーもいいな、ラーメンもいいなと思って席を立とうとすると、ある物が視界に止まった。
 
 斉木さんが机の棚部に咄嗟にしまった文庫本。完全に存在を忘れられていたそれは、ぽつんとそのまま残されているのだった。

「忘れてったのか」

 なんとなくそのまま呆然とその本を眺めているうちに、教室にいる学生らは少なくなり、いつの間にかに俺一人だけになっていた。

 とりあえず席を立ち、斉木さんが座っていた席に近付くと、少し屈んで本を手に取った。

 追いかけて渡した方がいいのか、それとも忘れたことに気付いて取りに帰ってくるだろうか。自分がどの行動を選択すればいいのか妙に思い悩んでしまう。
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