隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
自分の名前を知っていたなんて。自分の名前が呼ばれるなんて。自分を呼ぶその艶やかな声が脳内で反芻される。脳みそが溶けてしまいそうな感覚に陥る。想像もしたことのない状況に追いつけなくて、考えるということが難しすぎる。
ただ一つ、言えること。
耳まで真っ赤にして目を逸らし、恥ずかしそうに顔を覆う「ただの美人」ではない「少女のような美人」。
「かわいすぎんか…」
誰もいなくなった殺風景な教室に、熱を帯びた自分の声が宙に浮かんで、消えた。自分の心臓の音だけが大きく大きく響いていた。