隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

消えるワケ

 それから数日、斉木さんとは講義が被ることもなく、どこかでばったり出くわすこともなく、となると斉木さんとの接点なんて皆無だったなと改めて感じさせられる。

 あの時あの教室で感じた斉木さんへの「かわいい」と感じた感情も熱っぽさも、あの瞬間だけのもので、きっと自分はどうかしていたんだ、とすら思えてくる。

 そもそも斉木さんには彼氏がいるしハイスペすぎる。それに1年間同じ学科生として過ごしていたのに話したのが昨日が初めてだなんて、斉木さんのことなど何も知らないも同然だ。彼氏から略奪したいだとか自分が斉木さんに釣り合う男だとかなんて微塵も思わない。恋だの何だのの名前が付くような”大層な何か”があったわけではない。

 こんなのやめやめ。考えるだけ無駄。あの時のことは全部忘れてしまおう。

 そう思った頃に週が明け、迎えたプレゼミ。

 去年一年間全く関わりがなかったのに、この1週間の方がそれより長く感じられるほど斉木さんの顔を見るのが久しぶりに感じられた。

 俺は前回と同じように紘とゼミ室に入り、席が固定されているわけではないが前回と全く同じ座席についた。先に来ていた斉木さんと杉本さんも同じ席に座っている。

「今日もよろしくね」

 社交的な杉本さんが俺と紘に向かってそう声をかけてくる。隣に座る斉木さんは気まずそうな顔をして遠くを眺めていた。
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