隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
極力意識をしないように、この間のことは忘れるようにして今回から始まるグループワークに取り組み、何事もなくプレゼミは終了した。
それなのになんだか斉木さんが気まずそうな空気をずっと出しているような気がしたから、それに気付かないように振る舞うのはなかなか骨の折れることだった。
「じゃあ帰ろっか」
みんなでぞろぞろと教室を後にし、階段を降り始める。
(大丈夫、上手くやれる。この間のことは誰にも話すつもりもないし、なんならきれいさっぱり忘れてしまおう)
何事もなかったから自分の気持ちもケリがついたような感覚だった。自分の考えに一人でうんうんと頷き納得させようとする。
その瞬間。
「わっ…」
後ろからぐいっと引っ張られる感触。
予想していない事態に自分の体が上手く反応できず、バランスを崩して引っ張られた方向へ転びそうになる。
───バタンッ
ドアが閉まる音が静かに響き、なぜか自分は空き教室に滑り込まされたことに気が付く。
目の前には自分の腕をきゅっと掴む斉木里香の姿。