隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
「え…??」
頭の上にクエスチョンマークを付けて斉木さんを見下ろす。きっと身長差は10㎝くらいだろうなとか考えながら。
「あっ、えっと…ごめん…」
斉木さんはそう小さく謝るとパッと手を離し、同時に一歩後退りした。
「や、あの…うん、大丈夫なんだけど…」
斉木さんはこの間と同じように顔を伏せ、口をぎゅっと結んでいる。俺は彼女に対して一体どうしたら良いのか何と声をかけたら良いのか、困惑した頭では全く判断がつかず、ただじっと斉木さんを見つめた。
「あの…えと…この間…ごめんなさい、変なとこ見せちゃって…」
「え?」
「…この間、本せっかく持っててくれたのにお礼もしないで熱く語っちゃったりして、しまいには逃げるようにして出てっちゃって…感じ悪かったよね…」
声が震えているのがわかる。
目は合わないけど、なんとなく目の周りが赤くなってきているのがわかる。
「や、全然大丈夫だよ。全く気にしてないっつーか…うん」
「ほんと…?」
「ほんとほんと。斉木さん本好きなの意外だなーって思ったくらいで」
なんだか小さい子供を相手しているような気になってくる。つい優しく慰めるような口調になってしまう自分がおかしい。
「意外…かぁ。そっかぁ」
「あ、別に嫌な意味じゃないよ。ほら斉木さんってきらきらした生活してそうで読書する時間もなさそうっていうか」
「…ふふっなにそれ」
そうやって弱々しく目を細めて笑う姿があまりに眩しくて直視できず、今度はこっちが目を逸らしてしまう。
「別に読書が好きなこと隠してるわけでもないんだけど、なんとなくそういう話が合いそうな友達がいなくって。大野くんが初めてだったかも、あんなふうに話したの」
「そう…なんだ」