隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
”大野くんが初めて”。こんなセリフを斉木さんに言われて浮かれない奴がいるだろうか。
「ていうかさ!なんか雰囲気違うよね、前もそうだったけど、女子と話してる時と」
「あー…うん、そうだよね、嫌な感じ出しちゃってるよね、私…」
「嫌な感じっていうわけではないけど…」
うーん、と顎に手を当てて考える。
聞いてもいいのだろうか。なぜ急に消えるのか。なぜふとした時に険しい表情になるのか。
ちらっと斉木さんの方を見るとばちっと目が合う。もうなんだかその後の彼女の反応は分かってきた。案の定、斉木さんは即座に目を逸らし硬い表情で俯く。そして小さく小さくなっていく。
「ははっ」
縮こまる斉木さんがかわいくて。俺が笑うとさらに顔を赤らめる斉木さんがもっとかわいくて。こんなに強張っちゃうのに空き教室に引き摺り込む大胆さがもっともっとかわいくて。
「…あのさ、これ聞いていいのかわからないから答えたくなかったら全然いいんだけど」
「…うん…?」
「なんで突然消えたの?」
「え…?」
斉木さんははっとして顔を上げる。
「この間のプレゼミの後、急にいなくなっちゃったじゃん。決して責めてるわけではなくって、ただ単純になんでだったかなーって」
「あ…あー…」
「あ、嫌だったらいいんだけど!何か事情があったんだろうし、ゼミのメンバーも杉本さんはじめ誰も気にしてなかったから」
斉木さんの困惑した表情に焦って、やっぱりまずかったかと質問を撤回する。
「んー…あの、ね」
そうやってまさか斉木さんがその後に言葉を紡ぐとは思わなかったので、ぐっと前のめりになって次の言葉を待つ。