隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。


「えっと、えっと…」


 胸の前でぎゅっと組まれた両手の指から伝わる彼女の不安。しどろもどろになりながら、言葉を選んでいるようだ。


「お、す…」

「押す?何を?」


 彼女の口から小さく聞こえてきた2つの文字。何を伝えたいのかさっぱりわからず、思わず聞き返してしまった。


「あっ違うの、そうじゃなくて…」

「うん?」

「生物の、おす…」

「……性別としての雄?」

「…そう、です」

 そう言って斉木さんは顔を両手で思いっきり覆ってしまった。全く意味がわからない。

「え、ごめん、どういうこと?雄がどうしたの?」

 ペットの話か?それとも生物学の話?何をそんなに説明を躊躇っているのか理解できなくて、俺の頭の周りは教室に入ってきた時以上にクエスチョンマークでいっぱいになっている。


「雄として見ちゃうの…」

「え?何を?」

 もうわけが分からなくて遠慮も何もない。ずいっと迫って答えを待つ。


「男の人を…今は…大野くんのこと」



 開いた口が塞がらない、なんて言うけどそんなことってあるか?いくらびっくりしても口は閉じてられるだろって思ってた自分に言ってやりたい。

 俺は今、目の前に立っている美人の発言に口を閉じられないでいるぞ、と。
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