隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。

 彼女、斉木里香のことを知らない学部の人間はいない。むしろ学部を超えて、学年も超えてその名は高く広まっている。

 彼女がなぜそんなにも有名か、それは一目見ればわかることで、その容姿の端麗さに由来する。

 透き通るような白い肌に黒目がちな大きな瞳。すっと通った鼻に、口角の上がった口もとはやや大きい。どちらかというと大人っぽい雰囲気なのに顔立ちだけ見れば幼さが勝る。きっと周りの女子に比べて化粧が薄めなことも原因だろう。ココアブラウンに染めたつややかな髪の毛は胸下まで伸び、常に毛先が綺麗にカールされている。推定165㎝程度の身長にすらりと伸びた手足は「華奢」と言わざるを得ない細さである。さながらモデルのような出立ちにほとんどの人がチラ見をし、息を呑み、「美人」という感想をもつ。

 外見がそれだけ完璧であれば十分恵まれているはずなのに、神が施したのはそれだけではない。
 
 彼女はいつも明るく笑う。美人が笑うのだからそれだけで空気がお花畑のそれと一緒になるのだ。どんなにネガティブな話をしていてもいつも明るく話を終わらせ、友達が落ち込んでいる様子なら一緒に悲しみ朝までとことん話を聞く。らしい。聞いた話なので真偽は不明だが彼女のあの様子なら全然あり得る話である。と納得できるほどの人当たりの良さ。これはもうお育ちの良さによるものなのだろう。

 東京生まれ東京育ちならではの洗練された雰囲気をもち、育ちも良いのにお高くとまる様子もなく、誰に対しても平等で嫌な顔を見せないという全方位完璧に守備を固めた「ハイスペ女子」。と、俺は勝手に心の中でそう呼んでいる。
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