隙なしハイスペ女子大生は恋愛偏差値が低すぎる。
 ハイスペ女子は、自分みたいな田舎から出てきて何でも70点程度のテキトーさで物事をこなしてきた人間には興味がないだろう。同じ学科なのに名前も顔も知られていない可能性も十分にある。

 だから「お近付きになりたい」とか「お茶だけでも」とか、ましてや「付き合いたい」だなんて口に出さなくても頭の中で考えることすら憚られるのだ。



「あ、大野くんと関口くんもプレゼミ希望してたんだ」

 ゼミ室に入り、適当な席を見繕おうとしていると斉木さんと一緒に話していた女子の一人が声をかけてきた。

「そうだよ、俺ら意識高いからそこんとこ抜け目なくやってんだよ」

 さっき斉木さんがいることについて声を上げた友人の関口(せきぐち)(ひろ)が軽口を叩く。

 俺は「何言ってんだよお前」と軽く笑いながらロの字に作られた座席の一つに腰掛けた。斉木さんたちとは斜め向かいの位置になる。

 斉木さんから少し離れた自席から、ちらと彼女の方に一瞬目を向けてみる。すると、さっきまで明るく笑っていた顔が一変、眉間に少しの力が入ったような小難しい顔をして口を真一文字に結んで視線を下に落としていた。


 「?」

 その不自然なほどの表情の変わり様に俺は一種の不可解さを感じた。


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